昨日(4月13日(土))、将棋の公式戦としては初めてとなる現役プロ棋士とコンピュータ将棋の対戦、第二回電王戦の第4局塚田九段対Puella α(プエラ アルファ)があり引き分けとなりました。
Puella α(プエラ アルファ)の作者である、伊藤英紀氏はコンピュータ将棋はすでに、名人を凌駕したとおっしゃったそうです。その根拠を、氏のブログ(A級リーグ指し手一号)の4月3日分のタイトル「現状認識@2013年4月」という記事において、レーティングの点数からの類推として述べておられます。つまり、現在までのレーティングの点数で人間のプロ棋士におけるレーティングは名人で約1,900点、それを将棋24など、コンピュータ将棋も参加できるレーティングでは何点。計算量を増やせるようにすることにおいて数百点は上乗せできるのでその換算で行くと、レーティングから見た場合、コンピュータ将棋は名人を上回る、というのが理由となっています。
さて、レーティングというのは、大雑把に言えば平均的な強さの目安となっています。強い人に勝てば点数は多く増え、弱い人に負ければ多く点数が減る。同じぐらいの人には勝ったり負けたりだから、だいたい同じぐらい強い人同士は同じ点数になるだろう、ということです。
さて、伊東氏の思考は平均的に強い、ということがレーティングで表せる、ということで、名人よりもコンピュータが強いと主張されているわけですが、その平均的に強い、というのはどういうことでしょう。わたしは、その時点で氏の思考が終わっていることに少々違和感を覚えるので、穿った見方をしてみたいと思います。
平均的に強い、というのは、氏の考えでは、間違わないということと同義でしょう。将棋は読みのゲームであり、序盤中盤は、できるだけ終盤において相手の王様を詰める可能性が多い道筋をたくさん残すような可能性のある手を指し、最後には読みにおいて相手を上回り止めを刺す。これが将棋の本質であることは間違いありませんから、氏の考え方には十分な説得力があるようにも見えます。
しかし、それは、これまでの膨大な将棋のデーターベースがあってそれによる数学的帰納的な演繹(計算)方法が確立されている、という前提があるから故です。実際将棋というのは、すでにそれくらい成熟していると言っても過言ではないでしょう。しかし、電脳戦の第一局で阿部 光瑠(あべ こうる) 四段が、習甦(しゅうそ)の弱点をついて勝利を収めたというのは、効率的な帰納推論の弱点をついたものといえるでしょう。
わかりやすく言うと、例えば、名前のつくような戦法が新たに発見された時にコンピュータソフトは自身だけでその戦法に有効な対応策を考えられるかという問題があります。たしかに、現在のコンピュータ将棋は力将棋に持ち込まれても十分に勝てる実力を持っていますが、新戦法、あるいは、実践例が少ないような、今回の塚田九段の採られたような入玉ということにおいての対応は十分取れていないでしょう。
つまり、コンピュータは、新しい戦法を作り出せないし、新戦法が編み出された時に自身のみでは十分に対応が取れない(もちろん作者のサポートがあれば可能かもしれませんが)という点で、必ずしも名人よりも強いとは言い切れない本質的な問題点を抱えているということです。
言い換えれば、コンピュータ将棋というのは、二つの意味があり、狭義で言えばコンピュータのみで将棋を指すということでしょうが、広義のそれとしては、試合で将棋を指すのはコンピュータではあるが、実際にその戦法やアルゴリズムの改良においては人間の手助けがまだ必要である、という部分を含んでおり、伊藤氏は、広義と狭義を明らかに混同して用いられており、その上でコンピュータ将棋は名人よりも強いと言われているように思われます。
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